試弾
ご無沙汰しております。
あっという間に3月になり、
梅や桃のやわらかい香りが漂う季節がやってきました。
6年ぶりの日本の春に心踊る日々です☺︎
さて、今日は今秋のリサイタルに向けて
ホールのピアノを試弾して参りました!
過去4回のリサイタルでは
オーストリアのピアノメーカーである
ベーゼンドルファーと縁があり、
彼らの音と共にリサイタルを作り上げてきました。
そして今秋、5回目を迎えるリサイタルでは
プログラムの内容を含め
色々な角度から考えたときに
『どうしてもスタインウェイのフルコンで弾きたい…!』という思いが強くなり、
条件に見合うホールを探し始め
今日はそのピアノと初対面。
ピアニストは本番で
自分の楽器を使用することできないので
ホールに置かれているピアノとどう仲良くなるか、
ということがとても大切です。
自宅のピアノもお世話になっている調律師さんの上田さんも早朝から駆けつけてくださり、
音色や響き、ピアノの位置などについて
貴重なご意見を伺いました。
ピアノも生き物です。
きっと少しは距離が縮んだはず。
当日は皆さんにフルコンの音色を
楽しんで頂けますように!
前回ご好評頂いた音のパレットシリーズ第二弾。
今回は赤を予定しています。
赤のものを纏って、
会場でお会いできるのを楽しみにしております!
田坂麻木
ピアノリサイタル Opus. 赤
2018年10月13日(土) 19時開演予定
帰国記念リサイタル
先週の土曜日に、師走にも関わらず大勢のお客様に見守られる中、無事に帰国記念リサイタルを開催する事ができました。
そしてリサイタルが終わると同時に、私の留学生活も6年の幕を閉じました。
今回はアンケートも実施したくさんの方々がご回答してくださったので、終演後、朝4時まで有り難く読ませて頂きました。
プログラムの内容や、次回へのご希望など生の声を聞かせてくださりありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます!
新年にはピアノ教室開講、デュオコンサートなど新たな幕開けが待っております。そして、違う音楽の世界の活動も…!年明けに皆様にご報告させて頂きます😌
今年は大学院を卒業し、オランダとお別れし、日本に帰ってくるという感慨深い1年でした。そして皆様の応援に支えられ来年に向けての新たなスタートを切り、今からワクワクしております!
本年も大変お世話になりました。
どうぞ素敵なクリスマスを、
そしてよいお年をお迎えください☺︎
田坂麻木
プログラムノート④III ショパン/ポロネーズ 第5番 op.44
みなさん、こんばんは!
リサイタルまで1週間をきりました。
プログラムノートも今回が最終回です。
ポロネーズには、
英雄・幻想・軍隊と愛称のある曲が多く、
この5番にも付いています。
英語で、
Tragic=悲劇
という意味の愛称があるのですが、
あまり日本では馴染みがないようです。
1839年から46年まで、ショパンはフランスのノアンにある恋人ジョルジュ・サンドの館で多くの時間を過ごしていました。パリの喧噪を離れ、創作活動に集中するためです。そして、1841年に完成したこのポロネーズは、ノアンで生まれた重要な作品の1つです。
ショパンはこの作品において、ポロネーズとマズルカという2つのポーランドの精神を象徴する主要な舞曲を統合するという試みに出ます。
いつだつてショパンのポーランドへの想いが絶えることはなく、この時期に友人に宛てた手紙のなかでも「ポーランドに帰れることがあるだろうか」と述べています。
左の伴奏がポロネーズのリズムを正確に刻み、
その上で右が悲痛に訴えかけるように歌い続けるポロネーズで始まり、音楽隊がどこからかやってきて目の前を過ぎまた遠くへ歩んで行くマーチを経て、望郷の念を抱きながら穏やかな日々を思い出すように優しく歌うマズルカへ。それでも現実は厳しく…。
弾いている私自身、胸に込み上げるものがあるこのドラマチックなポロネーズ。
実は卒業試験のプログラムの最後の曲でもありました。
6年間お世話になった音楽院のホールにあったピアノとのお別れの曲でもあり、新しい楽章の始まりの曲でもあり…。これまでのピアノ人生の中で掛け替えのない一曲となりました。
今日まで綴ってきた楽曲たちを
9日のリサイタルで皆様と共有できます事を
心より楽しみにしております。
田坂麻木
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Eチケットの購入サイトは12月7日(木)をもってクローズされますので購入のご予定がある方はお早めにご利用頂きますよう宜しくお願い致します。
こちらから http://bit.ly/2euA7Gg
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プログラムノート④-II ショパン/前奏曲15番 「雨だれ」
こんばんは。
リサイタルまであと2週間!
プログラムノートも残すところあと2回となりました。
今回は先週に引き続きショパンの楽曲、
彼の作品の中でもよく耳にする「雨だれ」について。
この曲は全24曲からなる前奏曲op.28に収録されています。ショパンが尊敬していたバッハの平均律クラヴィーア曲集から大きな影響を受けたと言われており、平均律における24の全ての調性を用いて書かれています。
その曲集の中の第15番である雨だれ。
タイトルはショパン本人が命名したわけではありません。
この曲集を手掛けていた時、ショパンは恋人である女流作家のジョルジュ・サンドと地中海に浮かぶマヨルカ島に居ました。10月末、長雨が降り続けるある大嵐の日、もともと病弱であるショパンはお買い物に出かけた彼女の帰りを冷たい部屋で独り待ちます。自分に襲いかかる死の恐怖と孤独を抱えながら…。
"雨だれ"という題名はそんなショパンがピアノを弾いている音と、軒下からしたたり落ちる雨音とが微妙に調和していた、とサンドが書き記していることから生まれた通称…という説もあります。
そして、この曲の素晴らしいトリックは、
ABAという三部形式で成り立つ曲中で鳴り響く雨音が同じ音なのです。A部は、柔らかい陽の光が差し込む穏やかな雰囲気に対し、B部は死の淵で絶望に苛まれるショパンの悲痛な想いが聴こえてくるようです。この相対する2つのパートで鳴り響く雨の音は全く同じ音。ショパンの楽譜にはAからBに入る導入部分を何度も書き直した跡があるので、彼自身も悩みながらもがきながら書いたのではないでしょうか。
さて、次回はついに最終回!
プログラムノート④-I ショパン/ノクターン 遺作 嬰ハ短調
こんばんは。
11月も残りわずかとなり、
リサイタルの本番が近づいてまいりました!
今日から3週に分けて、当日お届けするショパンの作品のついてブログを綴っていきたいと思います。
1830年ごろ(当時20歳前後)ショパンが作曲したこの曲を捧げた相手は大好きな姉のルドヴィカでした。
ルドヴィカがピアノ協奏曲第2番へ短調を練習する時のための曲として書かれた、という説があります。
確かにピアノ協奏曲第2番にはこの遺作との共通点が所々に見られるのですが、このノクターンを練習用に使う…? 調も違い、歌い回しも違うので、果たして本当に練習用として献呈されたかは定かではありません。
もともとノクターンとして書かれた曲ではなく、
ルドヴィカがショパンの死後、彼の未出版作品のカタログを作った際に「夜想曲(ノクターン)風のレント(Lento w rodzaju Nokturna)」と記したことから、ノクターンに分類されることになりました。
1830年、ショパンがこのノクターンを作曲したウィーンに到着したのは11月。
彼の故郷ワルシャワでは11月29日に、一部の士官候補生達がロシアの支配に反抗し、コンスタンチン大公を暗殺しようとする事件が起こります。
それをきっかけに両国は緊張状態に入り、ポーランドとロシアの間で本格的に戦争が起こる気配が漂い始めました。
大好きな故郷にいる愛すべき家族、友人達がいったいどんな危険にさらされてしまうのか…
不安に駆られ、祖国の平和を想い、家族の安否を願い…。
そんな中で書かれたこのノクターン。
同時期に作曲された歌曲《願い》の中にある一節に
…もしも私がこの木立の小鳥なら、
他のどんな場所でも歌わないわ、
湖のためでも、森のためでもなく、
だけどいつまでも永遠に、
貴方の窓辺で、ただ貴方のためだけに……
と、あります。
小鳥になってすぐ家族の元へ飛んでいき、
自身が作曲した美しい音楽を届けたい、と想っていたのではないでしょうか。
このノクターンは胸を切るような物悲しいメロディーを切々と歌い続けますが、最後は明るい和音で終わります。
祖国と家族への愛。
どんな悲しみにくれようともその二つへの想いは変わらず心にいつも持ち続けていたのかもしれません。
プログラムノート③-プロコフィエフ/ピアノソナタ第3番
こんばんは!
近所の銀杏並木もすっかり黄色に染まり、日増しに寒さが身にしみるようになりました。みなさん、いかがお過ごしでしようか。
第3回目のプログラムノートは、
私が個人的に好きな作曲家の1人です。
ロシア帝国時代のウクライナ出身のプロコフィエフはピアニストであった母から手ほどきを受け、5歳で作曲をはじめ、10歳で交響曲を書いてしまう天才児。
1904年13歳でロシアの名門、サンクトペテルブルク音楽院に入学しますが、彼にとって音楽院の授業は退屈なものばかり。しかし音楽院で優秀な仲間たちに恵まれ、たくさんの刺激を受け、彼の作曲に大きな影響を与えることとなります。
1907年にこのピアノソナタ第3番は練習で書かれました。
ん?
ということは、
16歳で書いたということ…ですよね?
10年後に改作したとはいえ、
本人曰く
『展開部と再現部はちょっと変えたけど、
全体像はそんな変えてないよ〜』とのこと。
恐るべし。
ちなみに展開部はハンバーガーでいうところの具のところ。再現部は下のバンズ、上のバンズは提示部といったところでしょうか。
エネルギッシュなオープニングで始まり、
そこから止まる事なく音楽が流れていくこのソナタ。
プロコらしい打楽器的なピアノの使い方や、
和声、音の並び(まあ暗譜が難しい!)、
リズムで成る第一主題(上のバンズ①)に対し、
どこか切なく、懐かしい第2主題(上のバンズ②)が
左の半音の伴奏で支えられながら美しく歌います。
このソナタはイ短調(ラから始まる暗い調)とされていますが、中身を覗くとたくさんの調で溢れています。そもそも曲の一番最初の和音はホ長調(ミから始まる明るい調)です。
ハイドン同様、
ですが、一番聞くとハマってしまう彼の音楽。
ロミオとジュリエット、シンデレラなどの
バレエのロマンティックな曲もたくさん書いています。
ぜひ一度チェックしてみて下さい!
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田坂麻木 帰国記念リサイタル
2017年12月9日(土)
18時30分開演(18時開場)
古賀政男音楽博物館内けやきホール
チケットはこちらから:http://bit.ly/2euA7Gg
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プログラムノート②ードビュッシー/ベルガマスク組曲
みなさん、こんにちは!
三連休は秋晴れが続き、
とても気持ちが良かったですね!
さてプログラムノート第二回目は、
みなさんご存じ「月の光」が集録されている
ドビュッシー(1862-1918)作曲
ベルガマスク組曲です。
4つの小品からなるこの組曲は
1890年ごろに着手され、
その15年後の1905年に
改訂版が出版されました。
長い年月の間 何度も改訂が施され、
集録する曲を変更してみたり、
はたまた
『続・ベルガマスク組曲』を創ろうとしてみたり、
試行錯誤の末に次の4曲に落ち着きました。
第1曲目: プレリュード
組曲の顔になる初めの曲、
前奏曲(プレリュード)。
世界が開けたような
明るいオープニングで始まります。
中間部で、
異空間のようなもの悲しさが訪れるのですが、
そこでは教会旋法が使われています。
17世紀頃のヨーロッパでは
それ以前の長―――――い音楽の歴史の中で、
教会音楽に用いられてきた旋法の事を
教会旋法と呼びます。
留学1年目に勉強していたこともあって、
この広い音域を使った自由なオープニングが
これからの留学生活に抱いている
沢山の夢や希望を音で表しているようで
当時の気持ちを思い出します!
第2曲目:メヌエット
「ズん・チャッ・チャッ」
という明確なリズムではなく、
なんだか揺れ動いているかのように聞こえる
この曲。
前述の教会旋法が巧みに使われ、
夜の薄暗さのような不気味さが少し伺えます。
最後にグリサンド
(鍵盤を指でトゥルルルと滑らせるアレです)で
フッと消えてしまうのですが、
この霧に溶けてしまうような終わりは、
次曲への繋がりなのでしょうか。。。
第3曲目:月の光
前の曲がラで終わるのに対し
こちらはラ♭で始まるのですが、
その半音のズレがなんだか幻想的で、
メヌエットからのバトンタッチが
美しく繋がれます。
実は
『感傷的な散歩道』
というタイトルが付けられていたのですが、
後に現在の題名に変更されました。
この曲はポール・ヴェルネールという詩人の
詩をもとに作曲されているといわれています。
・・・悲しく美しいあの月の光の静寂に
梢の鳥たちを夢に誘い
すらりとした大きな大理石の噴水を
うっとりすすり泣かせるあの月の光に
.....なんですか、
この儚く美しい言葉の羅列は!
また、ドビュッシーは恋多き人物だったようで、
18歳から不倫、浮気、二股、駆け落ち、
いろいろ経験しているのですが、
この曲もきっと
好きな女性に贈ったのではないでしょうか。
留学時代、
音楽院からの帰り道に
いつもお月様を探しながら
この曲を口ずさんでいました。
第4曲目:パスピエ
4曲の中でピアニストに一番人気のある
パスピエ(私の統計上ですが)。
ちなみに私の師匠も一番好きでした。
もともとはフランス古典舞曲である
パスピエの拍子は3拍子なのですが、
ドビュッシーはそれを4拍にアレンジして
作曲しています。
ひたすら八分音符(♪)が
曲を進めていく最後の最後に、
あっさり曲を終わらせてしまうドビュッシー。
くぅ〜、憎いですね!
休符を置くことで無音にし、
逆に『音』を意識させるあたりが、憎い!
個々のキャラクターが
しっかり味付けされているのですが、
4曲並んでもお互いが前後の曲を邪魔しないどころか
各々の性格をきっちり際立たせているこの組曲。
みなさん独自のストーリーと併せて、
当日楽しんでいただけたら幸いです!
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田坂麻木 Maki Tasaka
12月9日(土)18:30開演
帰国記念リサイタル in Tokyo
◎チケットはこちらから http://bit.ly/2euA7Gg
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