【Op.BLACK 】幻想曲とシャコンヌ
Op.BLACKプログラムノート最終回では、2曲のバッハについてご紹介します。
幻想=ファンタジーという言葉は、今となっては「現実からかけ離れた空想の世界」を指しますが、もとは「思い描いて示すことができる」といったギリシャのphantasiaが語源だったとされています。
バロック時代の「幻想曲」は性格的小品曲というジャンルに分類され、特に決まった形式があったわけではありません。
大学4年の卒業試験(=大学院の入試)の1曲目に、この幻想曲を演奏しました。決然とした始まりに、自分のこれからの運命を託すような気持ちで弾いたことを昨日のように思い出します。
今回のリサイタルもこの幻想曲からスタートし、皆さんを黒の世界にご案内したいと思っています!
○J.S.バッハ=ブゾーニ: シャコンヌ ニ短調
元は伴奏の付かないヴァイオリン独奏のために書かれたものでした。
原曲が作曲されてから約170年後にフェルッチョ・ブゾーニによってピアノ用に編曲されました。(ヴァイオリン独奏も、痺れるかっこよさがありますので、ぜひ聴いて頂きたいです。)
ブゾーニは、名ピアニスト ルービンシュタインさえもが「悪魔的なテクニック」と評し、理想と崇めたほどの優れた腕前のピアニストであっただけでなく、教師、作曲家、指揮者、理論家、編曲者、そして、バッハの楽譜校訂者としても有名でした。
一定の和音進行にアレンジが施され展開していくシャコンヌは、緩急をつけながら川のように流れ続けていきます。行き着く先を、皆さんに聴き届けて頂きたいです。
_________________
皆さまと同じ空間で音楽を共有できることを、心から楽しみにホールでお待ちしております☺️
みなさまの"黒"の装いも楽しみにしております♠️
-----------------------🐈⬛---
音のパレット vol.4
♟Op.BLACK ♟
○日時
2022年10月16日(日)
14:00開場 /14:30開演
○会場
和光大学ポプリホール鶴川
〒195-0053 東京都町田市能ヶ谷1丁目2−1
○ドレス コード
黒🎩
○プログラム(予定)
and more…🖊🖤
○チケット
一般: ¥3000
under 20: ¥1500
※未就学児不可
▼チケットサイト🎫▼
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/021dfj52hjd21.html
-------------------------🐈⬛---
【Op.BLACK】悲愴ソナタ
オランダへの留学が決まり、一番最初に恩師から課題として提案された曲がベートーヴェンのピアノソナタ 「悲愴」でした。
恩師はベートーヴェンを敬愛しており、"本来の美しさ"をどこまでも追求されていました。
そのため初めてのレッスンでは、1楽章のたった2小節しか指導して頂けず、「ちがう!ちがう!」と言われ、ひぃぃぃと怯えながら受講したことも、今では良い思い出です。
ベートーヴェンより前の時代では、クラシック音楽は主に教会で演奏され、人から神に捧げるものとして奏でられていました。
そのため、一個人の感情を表現する事はある意味ご法度とされていました。
その様な時代の中、音楽に積極的に感情を込めるよう革命を起こした作曲家の1人がベートーヴェンです。
このソナタが作曲された時代、ベートーヴェンはピアノ即興演奏の名手として名声を博し、演奏作曲家としてウィーンで活動をしていましたが、ベートーヴェンの心には焦りが渦巻いていました。
人知れず、耳の病を抱えていたのです。
後に友人に宛てた手紙で、難聴を患っていたことがわかります。
"自分にとって大切な部分が衰えてきた。
素晴らしい耳を持っていると思われている私が、話し相手に聞こえにくいからもう少し大きな声で話してほしい、と頼むのはあまりにも恥ずかしくてできない。"
音楽室に飾られる有名な自画像から連想されるベートーヴェンの性格は、怒りん坊で癇癪持ち、短気で頑固、偏屈でケチ………言い過ぎでしょうか。
そんな彼の額に描かれた眉間の皺は、ただ気難しい性格によって刻まれたものではなく、彼に襲いかかった苦悩や試練を乗り越える選択をしてきた証、なのかもしれません。
悲しい運命を突きつけられ、拒み、受け入れ、希望を見出し、逆境に負けずに突き進む……密度の濃い音楽をたのしんで頂きたいと思います。
【Op.BLACK】前奏曲とバラード
今回はショパンが恋人ジョルジュと共に過ごしたマヨルカ島で、同時期に作曲された2曲についてご紹介します。
○前奏曲 op.28
①白鍵7つ(ドレミファソラシ)+黒鍵5つ=12種類
12+12=24曲の前奏曲がまとめられています。
元々は、バッハが同じく全調で書き上げた《平均律クラヴィーア曲集》の伝統に連なる作品を残すことが長年の願いであり、音楽家としての使命とも考えていました。
今回はその24曲の中から、私が好きな1曲を、Op.BLACKのプログラムにおける《ショパンの世界の入り口》として、第20番ハ短調をお届けしたいと思います。
和声の美しさに魅せられて、フェルッチョ・ブゾーニが「ショパンの前奏曲第20番による変奏曲とフーガ」を、セルゲイ・ラフマニノフが「ショパンの主題による変奏曲」を作曲していますので、ぜひこちらも併せて聴いていただきたいです!
○バラード第2番 op.38 へ長調
ショパンは人生で4曲のバラードを作曲しました。元々は歌曲に使われていた《バラード》というジャンルをピアノに落とし込んだのは、ショパンが初めてでした。
今回お届けする2番は、正気と狂気、影と光、静と動、相反するものが衝突し合います。
へ長調(ファから始まる音階)という、穏やかな日曜日の昼下がりのような雰囲気を持つ調で音楽は紡がれていきます。
突如雷光のような激しい音が空から降ってきます。
弾いている方も聴いている方も心臓がドッと跳ねる思いをするので、予習に音源を聴かれる方はどうぞ音量に気をつけてください……!
このバラード2番には、救いの光が差し込む事がほとんどありません。
明るい調(長調)で始まり、最後は打ちひしがれたように悲しい調(短調)で終わりを告げます。
このバラードには何度も書き直した跡が残っており、ショパンの弟子やシューマンはへ長調のまま終演するバージョンも耳にした事があったようです。
この曲が出版されるまで、何度も何度も推敲を重ね、熟考の末に今の終わり方をショパンが決めたことがわかります。
穏やかな昔話に想いを馳せても、突風や落雷に打ち消されてしまう…そんなやるせない現実的な黒の姿も、他の曲と共演させた時にどんな効果をもたらせるのか、私自身、当日の空間に響く音楽が今から楽しみです。
【Op.BLACK】2つのワルツ
今回のOp.BLACKには、-黒の宴-という副題が私の中にあります。
黒の持つマイナスなイメージだけでなく、遊び心や妖艶さを放つ音楽をプログラムに取り入れました。宴を彩る2曲のワルツをご紹介します🩰
○No.1 op.18 in 変ホ長調
演奏会で取り上げる事は多くはないように思いますが、有名な曲ですので皆さんもどこかで耳にした事があるのではないでしょうか。
はじめてこのワルツを聴いたのは、幼馴染のお家にあった電子ピアノの自動演奏でした。
出だしの「なにか始まる…!」という高揚感と、その後に続く舞踏会のような音楽に一度聴いただけで虜になってしまいました。
そして何より、ピアノを習い始めたばかりの私にとっては、こんなに沢山の音が一度に聴こえたり、飛んだり跳ねたり音が遊んで聴こえることに感動を覚えました。
密かにずっと憧れていた曲でしたが、なかなか学ぶ機会がありませんでした。
今回、あの電子ピアノの演奏にワクワクしていた気持ちも一緒に引き連れて、皆さんに聴いていただけることを楽しみにしています☺️
○No.7 op.64-2 in 嬰(えい)ハ短調
小学生の頃指示していた先生はとても情緒豊かで、森羅万象に彩りを見出されるような方でした。
「7番のワルツは、ため息からはじまるの。」とレッスンでお話して下さったことをよく覚えています。
音の連なりが半音(すぐ隣の鍵盤)滑るかのように落ちることで、確かに、はぁ・・・、と聞こえるのです。
なんともいえない色気や情感が醸し出されるのですが、ショパンでは半音がよく使われます。
声楽家に恋する事が多かったショパン特有の、音の紡ぎ方の表れなのでしょうか。
ピアノでは出せない音の間を自由に行き来する声楽に、音楽の表現の幅や、自身の気持ちの抑揚を重ねているのかもしれません。
ぜひ皆さまには"お気に入りの半音スポット"を探して頂きたいです😌
-------------------------🐈⬛---
音のパレット vol.4
♟Op.BLACK ♟
○日時
2022年10月16日(日)
14:00開場 /14:30開演
○会場
和光大学ポプリホール鶴川
〒195-0053 東京都町田市能ヶ谷1丁目2−1
○ドレス コード
黒🎩
○プログラム(予定)
and more…🖊
○チケット
一般: ¥3000
under 20: ¥1500
※未就学児不可
▼チケットサイト🎫▼
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/021dfj52hjd21.html
-------------------------🐈⬛---
【Op.BLACK】3つのエチュード
皆様、こんにちは。
大変ご無沙汰しておりますが、
皆様お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
昨年の6月以来のリサイタルに向けて、私は、皆様にお会いできることを楽しみに、練習の日々を過ごしております。
昨年に引き続き色をテーマにした「音のパレットシリーズ」です。
今回のテーマカラーは《黒》です。
5週にわたって、当日のプログラムには書ききれないそれぞれの曲目について更新していきたいと思います。リサイタルにいらしてくださるご予定の方には是非、そうでない方にも是非、読んでいただけたら嬉しいです☺️
また、早々にチケットをご用意いただいている皆様、ありがとうございます。会場でお会いできることを楽しみにしております!
------✍️
今回《黒》をテーマカラーにするにあたり、絶対プログラムに入れたい!と思っていたのが、ショパンの練習曲3曲でした。
ショパンの練習曲集はop10•25の2冊あります。
練習曲集Op.10 は、当時最高のピアニストとして敬意を表し、リストに献呈されました。この献呈はおそらく、一世を風靡したヴィルトゥオーゾ(超絶技巧の持ち主)からの賞賛を狙ったものとされ、実際にリストは惜しみない賛辞を贈ったと言われています。
Op.25はop.10の練習曲集から5年後の1835~37年にかけて作曲されました。
1837年にライプツィヒ、パリ、ロンドンにて出版され、マリー・ダグー伯爵夫人に献呈。
元々この練習曲集は教育用という名目のもと作曲されました。しかし、こうして現代まで演奏会で取り扱われるということは、それまでの練習曲にはない高度な音楽が、ただの課題学習としての練習曲の範疇を超えた、と言えるのだと思います。いいえ、言えるのです!!
『黒鍵』op10-5 ▷黒鍵での三連符
その愛称の通り黒鍵を多用する曲です。ショパンは、本作品でそれまで規則的に禁止されていた親指での黒鍵演奏を認めて、革新的な指使いを編み出しました。従来の"練習曲"とは比べ物にならない"音楽"がそこにあります。
私が初めて黒鍵に出会ったのは中学1年生のとき、当時新しい先生に師事したばかりでした。
指の使い方の基礎を1から教えて頂き、鍵盤では無く、専用の指を鍛えるトレーニングボードや計り器の上で指を鍛える日々が始まりました。
黒鍵のエチュードを弾いている時は、まるで平均台の上を軽やかに飛び回わる新体操選手のような気分です。
『革命』op.10-12 ▷右手のオクターブと左手の16分音符のパッセージワーク
「革命」という通称はリストにより広められました。1830年12月にロシア軍がワルシャワに攻め入ったことを知ったショパンが、失意と怒りに突き動かされて作曲したと言われています。
およそ200年も前に作られた曲を、今もその苦しみに直面している方々がいると思うと、練習していても胸が張り裂けそうになります。
落雷のような和音が鳴り響き、短調の嵐が音楽を席巻していきますが、最後は長和音で決然と終わります。
未来への希望を祈って選曲しました。
『大洋』op.25-12 ▷両手のアルペジオ
ピアノ学習者であれば一度は通る学習教材ハノン。
(指の運動の為に使います。学習している当時はなんっっっっっってつまらない!!!!!!と嘆いていましたが、今ではウォーミングアップに使える良い教材です。)
そんなハノンで学ぶ分散和音(アルペジオ)。
ド⇄ミ⇄ソ⇄ド⇄ミ⇄ソ⇄ド…と順に右に左に弾いていくのですが、シンプルなようで難しく、また単調なため練習している時はthe忍耐なのです。
が、このショパンの大洋に出会った時は衝撃を覚えました!あの地味なハノンはここで昇華されるためにやっていたんだ……!と。
荒れる大海原を旅しているようなドラマチックな音楽です。皆様にも、右に左に荒波を掻き分け荒波を一緒に航海して頂けたらと思います。
-------------------------🐈⬛---
音のパレット vol.4
♟Op.BLACK ♟
○日時
2022年10月16日(日)
14:00開場 /14:30開演
○会場
和光大学ポプリホール鶴川
〒195-0053 東京都町田市能ヶ谷1丁目2−1
○ドレス コード
黒🎩
○プログラム(予定)
and more…🖊🖤
○チケット
一般: ¥3000
under 20: ¥1500
※未就学児不可
▼チケットサイト🎫▼
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/021dfj52hjd21.html
-------------------------🐈⬛---
皆さまの黒の装いと黒い音楽が織りなす秋の時間を、楽しみにしております🎓
[uploading:9E4F8E48-3545-4832-A506-1FCA48957283/L0/001]
【Opus.Yellow】終演致しました!
6/20(日)@和光大学ポプリホール鶴川
-Opus.Yellow-
お陰様で無事に終演致しました🌱🐝
今回はコロナ禍での開催でしたので、開催告知の際は正直なところお客様からの反応が怖かったです。不要不急と思われてしまう事、毎日更新される感染者数、まん防発令、緊急事態延長… リスクを背負って開催する事はただのエゴなのではないかと思いました。
それでも告知の直後から「開催待っていたよ!」「たのしみにしているよ!」とのお声を頂戴し、本番の舞台に上がるまで背中を押して頂きました。
当日は天気を不安視していましたが、ご来場頂いた皆様のパワーのお陰で晴れました🌻そして皆様が纏った黄色が客席を照らして下さいました。
カーディガンや
バンダナやハンカチ
靴
バッグ
ワンピースにスカート
色々なところに黄色を散りばめて下さいました。
そしてお教室の子供達には専用のバッジを…🐝
会場に向かう途中、黄色を纏ったお客様同士が「あ!きっとこれからOpus.Yellowに向かうんだわ」と思って道中を楽しんでくださった事をあとから聞き、とても嬉しく思いました☺️🌼
そして、終演後に感想を送って下さった皆様、ありがとうございました。頂いた言葉の数々は、次回の演奏会だけでなく、これからの演奏活動を支えてくれる最高の贈り物です。みなさんが想像しているより遥か多くのパワーを頂いています。
この場をお借りして、心から感謝申し上げます!
またお会いできる日まで。
穏やかな日々をお過ごし下さい。
田坂麻木
【op.Yellow】⑤ファウストとメフィスト
さあ、今回でopus.Yellowに向けたプログラムノートは最終回になります✍️✨
演奏会最後を飾るのは、リストのメフィストワルツです。
この曲を初めて聴いた時のことを今でも覚えています。乱暴にヴァイオリンをかき鳴らすような音から始まったかと思うと一気に天に登り、曲中を悪魔が楽しそうに駆け回る様に衝撃を受けました。まるでディズニー映画のように描写と音の羅列がマッチしていて、登場人物の瞬きや、森の木々のゆらめきにも"効果音"がついているような…
このメフィストワルツとは、リストが惚れ込んだ「ファウスト伝説」からインスピレーションを受けて作曲されました。全6曲ある内の今回お届けする1番が最も演奏される機会が多い人気作品となっています。
ファウストとは、ドイツの伝説に登場する人物です。彼は学者として大成功を納めるも、自分の人生に満足しておらず、そのために悪魔(=メフィスト)と契約をして自身の魂と引き換えに果てしない知識と現世での幸福を得ました。
そんなファウストとメフィストが村の農民たちが集う居酒屋に訪れます。愉快に歌い音楽を奏でる楽士からヴァイオリンを取り上げたメフィストは取り憑かれたかのように弾き始め、農民たちを陶酔のなかに引き込む。ファウストはそこで黒髪の美女に出会い心奪われ、誘惑し星の夜へと連れ出し、森の中に入ってゆきます。暗闇の森では夜泣き鶯が歌い……
官能的で悪魔的な音楽に、目がチカチカするような煌きや艶かしさが随所に流れています。
ぜひ怪しさをお楽しみ下さい。
それでは、皆様に久しぶりにお目にかかれる事を、心より楽しみにしております!
どうぞお気をつけてお越し下さい☺️
-------🐝〜…-----
【当日のコロナ感染予防に関するお願い】
・皆様のマスク着用
・場内でのお喋りは、お控えください
・贈物等、お控え頂きますようお願い致します。また直接の手渡しは禁止されておりますのでご了承頂けますよう宜しくお願いいたします。
-------🐝〜…-----
田坂麻木
ピアノリサイタル
音のパレットVol.3
Opus.Yellow
○日時/会場
2021/06/20(日)
14:30開演(14:00開場)
和光大学ポプリホール鶴川
ドレスコード:黄色*
ホールは外気との換気システムがあり、皆様にはマスク着用・アルコール消毒・ソーシャルディスタンス等のお願いをしながら、感染予防対策を徹底して参ります。
*ドレスコードの黄色につきましては、お洋服だけでなくアクセサリー、バッグ、マニキュア、靴などでも大丈夫です🙆♀️ またお楽しみの一つとして設けておりますので、新たにご用意頂く必要もございませんので、どうか無理のない範囲でお楽しみいただければ幸いです☺️🤲
○チケットについて
※下記URLにて当日まで販売しております
一般:3000円
学生:1500円※高校生以下
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/025w530ednm11.html
※東京都がロックダウン等によりリサイタルが中止になりました場合は、チケット代金全額を返金させて頂きます。